木地屋だからできること
意匠・技術
日本の誇るべき文化である「漆」。生活の中で使うことで、人の気持ちを豊かに穏やかにしてくれるものだから、多くの人に木と漆をつかってもらいたいと想う。そして、輪島の伝統と文化、桐本木工所の技術を次の世代へと渡すべく、伝え創り続けている。
木地屋は塗師屋からきた注文を詰めるために、実際に図面を引き、塗師屋の意図を汲み取り、モノの形に落とし込んでいく。三次元の造形感覚が必要不可欠とされる木地屋。デザインからプロデュースまで手掛けることができる輪島キリモト・桐本木工所では、様々な要望に応えることができます。
30代〜40代の木地職人、漆塗り職人を抱え、木地業だけでなく、自らが企画した商品をつくり販売するという体制を整えている輪島キリモト・桐本木工所。これは、古くから輪島塗り産地として栄え、分業が主流となっている輪島の中では珍しいことだと言えます。木地屋として確かな技術と実績があるからこそ、木地の注文から、仕上げまで行うことができます。
素材
木地づくりは、素材となる木を選ぶことから始まる。漆を施す場合、土台となる木地は見えなくなってしまう。しかし、木地の善し悪しは完成した製品を使っているうちに顕著に現れるため、仕上げを支える木地には高度な技術と精度が要求される。漆仕上げまで行う輪島キリモト・桐本木工所では、木や漆はもちろん、漆と掛け合わせて使用する珪藻土、布、和紙なども良質な素材を使用しています。
天然木
天然木を丸太で購入した後、木を落ち着かせるために、天日で3年、屋根だけある場所で1年ほど自然乾燥させ、さらに倉庫で5、6年寝かせます。性質の良い木材は、10〜20年以上寝かせることもあります。桐本木工所の所有する木材は、朴、セン、タモ、ヒバ、桐、そして輪島の地元材でもあるアスナロなど。特に、朴は適度な硬さと柔らかさを持ち加工がし易く、耐水性にも優れています。アスナロはヒノチオールの香りが清々しく、防虫、防腐の機能、耐水性にも富んでいるのが特徴です。
漆(うるし)
漆は、漆の木から取れる樹液です。樹齢10〜15年ほど経った漆の木に傷をつけて、滲み出てくる漆(樹液)を職人が掻き取って集めていきます。一本の木から取れる量は約200グラムほど。全てが手作業で行われ集められた漆は、とても貴重なものなのです。輪島キリモト・桐本木工所では、噐、小物、家具、建築内装など用途・仕様に応じて木に漆を塗り重ねていきます。
珪藻土(けいそうど)
輪島市内の小峰山から産出される珪藻土を焼成粉末にしたものを「輪島地の粉」といいます。輪島で産出される珪藻土は特に純度が高く、ガラス質で硬く、表面には微細な気孔が無数にあいているため漆がよく染み込みます。これが堅牢な輪島の漆モノをつくり出すのです。「輪島地の粉」を糊漆(米糊に漆を混ぜ合わせたもの)に混ぜたものを「地漆」といい、下地塗りに使用します。さらに輪島キリモトでは、下地で使用されていた「蒔地技法」を、仕上げにも応用しオリジナルの「makiji(蒔地)」「千すじ」仕上げを誕生させました。これらの技法は、漆の質感を保ちながら、金属のカトラリーが使えるほど表面硬度の高い仕上げです。
布・和紙
輪島塗りでは、椀の縁や高台、内側の底面など摩耗しやすい部分に、糊漆で布を張り補強をする「布着せ」という工程があります。布は「麻布」「寒冷紗(かんれいしゃ)」を使用しており、この工程を行うことで、長く使い込んで傷んでも「直す」ことができるのです。輪島キリモト・桐本木工所では、布や和紙の表情を活かした漆仕上げも行っています。家具やインテリア小物、建築内装材に至るまで、表情豊かな漆モノを提案いたします。
道具
モノづくりで欠かせないのが道具である。木工機械をはじめ、同じ形をつくるための型。人の手による加工を得意とする輪島キリモト・桐本木工所では、鉋やノミ、彫刻刀など、つくものに合わせて、職人自らが道具もつくり出します。
型・治具(じぐ)
木地づくりでかかせないのが「型」。図面をもとに厚紙で型をとり、それを板に写し、同じ形をいくつもつくるための「治具」をつくる。匙から仏壇まで、木地屋が手掛けるもの全てには治具があり、そのパーツごとの型がある。桐本木工所には、明治、大正時代の漆器組合図録にある朴木地、箱木地をはじめ、その後桐本独自の技術によって生み出されていったもの、、、数えきれないほどの型、治具がある。それらはこれまで行ってきた木のしごとの証。
ノミ・彫刻刀・鉋(かんな)
木を刳り出すのに欠かせないノミや彫刻刀は、刃先が針のようにとがったものや、湾曲したもの、刃先の太さや長さの違うものが数多くあり、新しい形をつくるごとに増えていく。
そして、鉋の種類は三百丁以上。つくるものの形状、職人自身の手に合わせ、鉋もつくる。小さな匙の丸い曲面をつくる際には、指に隠れて見えないほどの豆鉋が使われる。裸足のまま胡座をかいた職人の足の指に匙が押しあてられ、体と道具を一体化させて削っていく。職人の体もまた、道具のひとつ。